みなさんは毎日いろいろな問題や相談事を持ち込まれます。それらを(他の仕事をしながら)右から左にどんどんさばいて行かなければなりません。
状況査定 (SA) ではそれらに優先度を付け、次のステップにつなげるためのプロセスを提供しています。
KT法とは
KT法については、下の記事に記載しています。
Wikipedia も参考になります。
KT本社のサイトには、KT法を採用している企業の名前がのっています。誰でも知っている大企業が 採用していることがわかります。( KT本社のサイト)
状況査定 (SA, Situation Appraisal ) とは
SA は「状況把握」とも訳されますが、どちらかといと査定にイメージは近いと思います。
あまり重要視されませんが、知っていると意思決定のスピードが速くなります。
状況査定 (SA) の必要性
同時多発の意思決定
たとえば、会社の経営者やマネージャーになったことを想像してみてください。
マネージャーは毎日いろいろな問題や相談事を持ち込まれます。
悩んでいる時間はあまりなく、それらを(他の仕事をしながら)右から左にどんどんさばいて、誰に任せるべきか、方針を決める必要があります。
状況査定 (SA, Situation Appraisal)では、
- それぞれの懸案を評価して優先度を付け
- 次のステップにつなげる
ためのプロセスを提供しています。
SA は方針決定のプロセス
よく言われることですが、仕事は意思決定の連続です。仕事に限らないと思いますが、みなさんも毎日なんらかの意思決定をしていると思います。
それらには DA (決定分析) プロセスが使えます。
また問題解決には PA (問題分析) プロセスが使えます。
次のステップを決めるために状況査定 (SA, Situation Appraisal) プロセスが使えます。
状況査定 (SA) の手順
状況査定 (SA) の大まかな手順は以下のとおりです。
- 気になること(懸案、心配事、機会、可能性など)のリストを作る
- 心配と機会をリストする
- リストした心配と機会を分類して、具体的にする
- それぞれの気になることに優先度をつける
- 重要度、緊急度、成長度を考え、相対的な優先度を決める
- 次にとるべきアクションを決める
- 必要な分析のタイプと数を決定する
- アクションに誰を参加させるべきか決める
- 必要な情報とコミットメントを検討し、どのようなヘルプが必要か確認する
ここでは5ステップを説明します。よりイメージしやすいからです。(クリックすると開きます)
1. 驚異と機会をリストする
今現在の気になること(懸案、心配、機会、可能性など)を余すことなく、リストします。
これは特に難しいことはないと思います。
結果
「気になることリスト」ができます。
2. リストした心配と機会を分類して、具体的にする
リストした気になること(懸案)を分類して、具体的にします
- それは要はどういうことなのか?
- 心配事(機会)は正確か?
- 他にあるか?
- 客観的な証左はなにか?
- 実際になにか起っているか?
これらについても自問自答し、リストを書き直します。
項目が増えたり、減ったり、文章が変わったりするでしょう。
以下はそのサンプルです。
気になること | 具体的には |
---|---|
年末レポートの遅れ | 遅れると年末に深刻な時間的ロスが発生する。 顧客は弊社のサポートを信頼しなくなる。 |
ブラウザーのあるページの読み込みが遅い | E-コマースのページの一つが読み込みに2分かかる。 |
広告キューが遅いとの苦情 | 新規広告の効率的な提供ができない |
パックアップサイトの画像の更新が遅くなるかもしれない | フェイルオーバーが発生すると、スタンドパイ側のサイトは画像を速くロードするためのリンクを持っていない |
結果
ブラッシュアップした「気になることリスト」ができます
3. 重要度、緊急度、成長度を考え、相対的な優先度を決める
重要度、緊急度、成長度の面から検討し、ランク付けします。
このまま放置していたら、どうなってしまうのか?です。
通常「現在(のインパクト)」「未来(のインパクト)」「期限(タイムフレーム)」で High, Middle, Low で付けます。
気になること | 現在 | 未来 | 期限 | 最重要 |
---|---|---|---|---|
年末レポートの遅れ | H – 顧客関係は必須 | H – 顧客の感情は悪くなる | H – 関係を修復しない限り他の業務でも顧客をヘルプできない | |
ブラウザーのあるページの読み込みが遅い | M – マーケティング製品の一部 | M – 変わらないが、状況はより微妙になる | M – 参加する必要あり | |
広告キューが遅いとの苦情 | M – 広告収益を失う | M – ビジネスベンチャーが成功すると、コストがもっと掛かる | H – 新製品が2週間以内に立ち上がる | |
パックアップサイトの画像の更新が遅くなるかもしれない | L – フェイルオーバーが発生輝と、新製品に変更ができない | M – この製品が成功するかどうかで状況が変わる | L – フェイルオーバーは通常運用ではない |
H M L だけでなく、各セルにコメントを入れておくのがよいでしょう。
ランク付けした理由が明確になります。
せっかく文書化するので、いつでも参照できるものにします。
後から必ず必要になります。
結果
「気になることリスト」に優先度が追加された表ができます。
4. 必要な分析のタイプと数を決定する
やることが決まったら、どの分析をするのかしないのか、複数の分析をする必要があるのか、検討します。
以下の項目を検討します。その心配事は:
- 正常な状態からの乖離があるか
- 原因はわかっていないか?
- 原因を知る必要があるのか? → あれば PA (問題分析)
- 決めることがあるのか? → あれば DA (決定分析)
- 防ぐ必要があることがあるか? → あれば PPA (潜在的問題分析)
- もっと現状を掘り下げる必要があるか? → あれば SA (状況把握) に戻る
前段階で「やる、やらない」は決まっているので、どれかをすることにはなります。
でも現状把握が不十分と判断されたらまた 状況査定 (SA) の最初に戻り、再検討します。
気になること | 分析 | 次のステップ |
---|---|---|
年末レポートの遅れ | PA | 全てを網羅して正確な問題の定義を得る |
ブラウザーのあるページの読み込みが遅い | SA | どのようなアクションを取るべきかを検討する |
広告キューが遅いとの苦情 | PA | 全てを網羅して正確な問題の定義を得る |
パックアップサイトの画像の更新が遅くなるかもしれない | DA | サイト間の十分なスピードを得るためのアプローチを提案する |
分析は表のようになりました。
結果
実行する分析が決まった表ができました。
5. どのようなヘルプが必要か確認する
必要な情報とコミットメントを検討し、誰の、どのようなヘルプが必要か検討します。
気になること | 分析 | 誰がいつ、何をするか |
---|---|---|
年末レポートの遅れ | PA | 顧客の代表、テクニカルサポートエキスパート、問題解決ファシリテーターを集め、問題定義と仕様を6時間で作成する |
ブラウザーのあるページの読み込みが遅い | SA | セールスチームと顧客が問題を解決する |
広告キューが遅いとの苦情 | PA | セールスチームと顧客 |
パックアップサイトの画像の更新が遅くなるかもしれない | DA | 顧客 |
結果
状況査定 (SA) の結果を全て網羅した表ができました。
これで、問題分析や決定分析などの次のフェーズに移ることができます。
まとめ
- 状況査定 (SA) は大量の懸案を評価して優先度をつけ、次のステップにつなげる論理的プロセスです。
- 気になることをリストし、優先度を付けます。
- どの分析を採用して、だれのヘルプが必要になるのかを判断します。
- 全てが終わったら、分析を開始します。
KT法の参考文献
KT法の教科書である The New Rational Manager の日本語訳になります。
こちらはオリジナル(英語)です。
The New Rational Manager: Effective Action Begins With Clear Thinking (English Edition) Kindle版
実際にセミナーを受けると、ワークシートやオリジナルテキストや各分析のやり方を書いたカードを貰えるのですが、個人で受けるには少し高価です。(米国の企業は、やり方を書いたカードをよくくれます。)
なので書籍で学ぶしかありませんでしたが、やり方を理解して実践していけば習得は可能です。
上の2冊は KT法を学ぶ上でオススメの本です。
今回も最後までよんでいただいてありがとうございました。
ではまた~。